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 正しい嫁の躾け方1(リウリーの場合) 





俺はワルイ13世。
最近結婚したばかりの新婚フレッシュで若くてイケメンな王だ。
我が国の繁栄のためにも、愛しい妻とラブラブな毎日を過ごし、優秀な後継者を授かることが急務!
しかし、今ここで大きな問題が起こっている。
もちろんそれというのは、妻となったリウリーに関する事である。
どういう問題かはさておき、今日も俺は問題解決に向けた一歩を踏み出すのだ。
彼女の部屋のドアを今、勢いよく開ける!!
「リウリー!!入るぞ!!」
「!!?」
部屋の中のリウリーと目があった時、彼女は下着姿だった。
おっといけない!着替え中に入ってしまったようだ!これは夫婦の親睦を深めるチャンス!
「いいタイミングで裸になっているじゃないか!今こそ夫婦の契りを交わそう!!」
俺が高らかに宣言すると、リウリーは真っ赤になる。
そして……
「〜〜〜〜〜っ!!」
「なんだ?お湯が沸騰した時の真似か?ははっ、うまいうまい!お前にもそんなユーモアがあったとは!」
俺がにこやかに褒めた次の瞬間、彼女の姿が消えた。
かとおもったら、目の前に現れた。
ここからは怒涛の展開だから、ゆっくりと理解してほしい。

俺は、蹴られ、殴られ、やっぱり殴られて蹴られて殴られて、最後の蹴りで部屋の外まで吹っ飛ばされてしまった。

ドアを最後まで閉めきらなかったのは不幸中の幸いだ。
もしも閉めきっていたら、俺はドアに背中から激突して部屋から逃げられなかった上に、
息絶えるまでボコボコにされただろう。
しかし彼女の連続攻撃は見事だった。普段のゴテゴテした服を着ていない分、身軽に動けたのだろう。
彼女は、歴史ある大国の姫君。国では“姫将軍”の異名を持つ少女だ。
異名の通り武術の心得があるらしく、俺の最強のメイドがてこずるほどに強い。
そして俺は、弱い!!

仕方なく俺は、別の部屋で先ほど言った最強のメイドのリリアに手当を受けることになった。
リリアは可愛らしいメイド服を着て、優しく俺を手当てする。
「大丈夫?ワルイ様?」
「死にかけた。だが、あいつと打ち解けるまではこんな事でいちいち心折れてはいられないな。
しかし、なぜ俺はあんなにも彼女に嫌われてるんだ?」
これが問題だ。俺は何故かリウリーにすごく嫌われていた。
顔を合わせるたびに「変態!」と罵られ、うかつに近づけば彼女の手足から繰り出される技の餌食。
困り果てる俺にりりあが微笑みかける。
「……きっと、照れているだけですわ」
「そうだといいのだが……どうしたら彼女と仲良くなれるだろう?」
「う〜ん……ワルイ様、彼女に殴られて負けてばかりでしょう?
きっと舐められてるの!あの子は実力主義なところがあるから!
だから、夫として彼女より優れているところを見せれば信頼を勝ち取れるんじゃないかしら!?」
「なるほど!いい案だ!!さすがお前は優秀なメイドだな!」
「うふふ♪ありがとう」
ならばさっそく、俺が彼女に勝るところを披露しに行こう!いざッ!
俺は勇ましく彼女の部屋へ行く……途中で城の中にある大図書館に寄った。

「リウリー!!入るぞ!!」
彼女の部屋のドアを勢いよく開ける!!
今度はきちんと机に座って服を着ているリウリーだけれど、さっきより驚いているぞ。
「きゃぁぁっ!またなの!?ノックくらいしなさいよ変態!」
「む!また変態と言ったな!?俺の名前は“ワルイ13世”だ!いつになったら覚える!?
長くて覚えにくければ“ワルイ様”でもいいぞ!みんなそう呼ぶ!」
「バカにしないで!!覚えられないんじゃないわ!わざとよ!誰が名前で呼んでやるものですかバカ変態!」
「ぬぬ……照れ屋さんめ」
「おめでたい頭だわアンタって……」
フンっ!と可愛げ無くそっぽを向いたリウリー。だがその態度も今日で終わりだ!
俺の優秀さを思い知るがいい小娘!!
「リウリー!早速だが一緒に勉強をしよう!この本に書かれた詩を勉強するぞ!」
「は?」
「お前の国の詩だろう!?いい事がたくさん書いてあるんだ!覚えて意味を理解して教養を高めるぞ!」
俺はリウリーの目の前に分厚い詩集を置く。カクカクしてせせこましい文字が並んでいる、彼女の国の詩集だ。
リウリーみたいな体を動かすのが得意そうなヤツは、こういう頭を使う勉強が苦手だろう!
そして俺は得意だ!
世界の言語を習得している俺の黄金のブレインをなめるな!
リウリーは嫌がると思ったが、以外にもため息をついて呆れ顔だ。
「……それ、私はとっくに暗記してるわ。内容も大体覚えてる」
「何だと!?」
は、ハッタリだ!そうに決まってる!
「よ、し!ならば今ここで言ってみろ!」
「………春の――」
リウリーは、めんどくさそうに、しかし確実にスラスラと……詩集の全部を読み上げてしまった。
ご丁寧に一つの詩を読み上げるごとに、簡単な意味の要約を述べて。
こ、これでは俺の出る幕が……!!
「ちくしょう!お前は運動が得意そうだから頭が悪いと思っていたのに!!」
叫んだ瞬間、リウリーに蹴られた。その勢いで部屋から退場させられた。
そしてドアの傍まで来て、俺にこう叫んだ。
「お父様が私に武術をやらせてくれる条件だったの!
勉強も……あと、姫として身に付けていなきゃいけない事は一通り覚えたわ!
バカにしないで!変態のくせに!二度と来るな!」
バンッ!!
勢いよくドアが閉まった。この作戦は失敗だ……。
それどころか、リウリーが予想外に何でもできるハイスペックプリンセスだと分かってしまった。
俺は一体、何でアイツより優秀な所を見せたらいいんだ!?
一度、リリアの所へ戻って作戦を立て直すか!?
ああ!!俺はこのまま、一生、跡継ぎに恵まれることも無く、愛の無い結婚生活を送るのか!!?
そんなのは嫌だ!!俺は愛のある結婚生活を送りたい!!
「うぉぉぉぉぉ!!リウリーぃぃぃぃぃっ!!!」
俺は叫びながら部屋に突入しようと……クソッ!!鍵が!!
「リウリーぃぃぃぃぃっ!!!入れろぉぉぉぉぉぉぉっ!!お前の弱点晒せぇぇぇぇぇぁぁぁっ!!」
ドンドン!!バンバン!ドンドン!!ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!
めちゃくちゃにドアを叩いて、叩きまくった。
すると中から何か聞こえてくる。
『うっ……ひっく……ぐすっ……!!』
「ハッ!リウリー!?」
まさか泣いているのか!?俺は一瞬にして我に返る。
心配になってドア越しに叫ぶ。
「す、済まなかった!大声を出して、怖かったか!?もう怖がらなくていい!俺は冷静だ!」
『うっ……うぅっ……ぇっ……!!』
「おいどうした!?泣いているんだろう!?具合が悪いのか!?お腹が痛いのか!?開けろ!!」
何度呼びかけてもドアは開かない。
何てことだ!中でリウリーが泣いているというのに!
俺は必死でドアノブを回してドアを押す。
「くそっ!この、こんなドアなんか!!」
ガチャガチャガチャ!!ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!
音がうるさい!!
「こ、怖がるなよリウリー!?お前を助けに入ろうとしているんだ!」
必死に中へ呼びかけながら、俺は部屋の中へ侵入しようとした。
そして、その努力は実を結ぶ。
「おどきになって!ワルイ様!」
「リリア!そうか、お前さえいれば……!」
「ゲビャァァァァァァッ!!」
変な掛け声でリリアは扉を蹴り破った。
俺は急いで部屋の中へ駆け込んだ。
「リウリー!!」
「うっ、ふぇっ……うぇぇぇぇっ……」
リウリーは、さっきの詩集を抱きしめながら泣いていた。ボロボロと涙を流して。
見た事もない気弱な表情を晒しているのは、ただの一人の少女だった。
おれはゆっくりと彼女に近づいた。
「お前……故郷が恋しいのか?」
「うっ、うっ……うるさい……!うっ、ぐすっ……!」
泣いていても、俺に対する悪態は相変わらずだ。
けれども、リウリーが胸の中の詩集をさらにキツク抱きしめる。
それだけで答えは十分だ。
「……分かった。俺の前ではそんな態度でしかいられないんだろう?俺はこの部屋を出て行く」
「ぐすっ……」
「我が城は、最高の防音設備を誇っており、お前がいくら泣き喚いたところで外には音が一切漏れない。
これはただの自慢話だ。今、お前に伝えたかった」
「うっ……ふっ……!!」
「いくぞリリア!リウリー!ご飯ができたら呼びに来るからな!」
俺はリリアを連れて部屋を出て、ドアを閉めた。
直後、
『うっ……うわぁあああああああん!!』
大きな泣き声が部屋の外まで聞こえてきた。
リリアが心配そうに言う。
「傍にいてあげなくていいの?あの子、心配だし、ワルイ様の好感度を上げるチャンスだとも思うけど……」
「いい。俺が傍にいるとアイツは泣けない」
「ワルイ様……」
リリアが悲しそうな顔をして、俺の両手を優しく握る。
「いつか、リウリー様が貴方の傍で安心して泣ける日が来るわ」
「……そうだな」
俺達はそっとリウリーの部屋を離れた。

ちなみに、ご飯ができたので呼びに行ってもリウリーは出てこなかったのでリリアに部屋まで運ばせた。
明日にはリウリーも元気な顔を見せてくれることを願っている。

【次の日だ】

俺は今日も彼女の部屋のドアを勢いよく開ける!!
「リウリー!!調子はどうだ!?」
「……最悪よ。誰かさんのせいでね」
今日はソファーに座って大声を出さないリウリー。
それが何だか物足りない気分だ。心なしか目も腫れている。
俺は彼女の傍へ寄って隣に腰かけた。
「傍に来ないで」
元気のない拒絶。俺は今日こそ、この関係を改善したかった。
「どうして俺をそんなに嫌うんだ!夫婦じゃないか!結婚しただろう!?」
「結婚?夫婦?私を無理やりさらって来たくせに」
「けれど最後にはお前は俺と結婚する事に同意した!」
「…………」
リウリーが悔しそうに唇を噛む。
彼女は異国でホームシックにかかってるんだ!けれど、愛する夫が傍にいれば、その辛さは和らぐはず!
俺は彼女の“愛する夫”にならなければならないんだ!
だから必死にリウリーを説得する。
「お前を故郷へ返すことはできない!お前だって、そんな事覚悟の上で俺と結婚したはずだ!
だったら、このまま俺を嫌っているのは無意味だ!お前に好かれる努力ならなるべくする!
お前はこのまま愛の無い結婚生活をするつもりか!?俺は嫌だ!俺は何を言われようと、お前を我が妻として愛するぞリウリー!!」
「……バカ」
リウリーは少し俯いて、小さな声でこう言った。
「昨日は、少しアンタを見直したの。私の事をとても心配してくれたから……」
「何だと!?」
リウリーが、俺を認めてくれた……
「ならば今すぐ夫婦の契りを!!」
「そういう所が嫌なの!!」
思いっきり顔面をグーで殴られた。痛い。大人しく話を聞こう。
「づ、づづぎをばなずがよい……」
「……私、一つ心残りがあるの。叶うかどうか、分からないけれどチャンスがあれば一度故郷へ返してほしいわ」
「何の事なんだ?」
正直、俺としては彼女を一度でも故郷へ返したくはない。だって、そのまま逃げる可能性があるじゃないか。
けれどここでそれを言ってしまうと、またリウリーが意固地になりそうなので黙っておく。
「私、国にある竹林が大好きだった。お父様に隠れていつも仲間たちと遊んでいたの。
あ……仲間って言っても、みんな私の護衛達。きっと子供の遊びに付き合ってくれていたのね。
今思うと面倒をかけてしまったわ」
「ふむ。その者達もそれなりに楽しかったのでは?」
「そうだといいけど……でもね、ある日私……
皆を驚かせようと思って、こっそりみんなの傍を離れて隠れようとしたの。
そうしたら迷子になって、獣に襲われそうになった」
(その獣は後で根絶やしにしておかなければ)
「その時にね、とても強い武術家が私を助けてくれたの!すごくカッコよくて!
彼は旅の武術家らしくて、“竹林不敗”と名乗ったわ!
私思わずこう言ったの“弟子にして!貴方と一緒に旅に連れて行って!”って。
もちろん断られてしまったけれど」
「それはそうだろう」
「だから私言ったわ……“だったらいつか、お前を倒す!!”って!」
「何故そうなる!!?」
「だって悔しいじゃない。それから私、強くなれるように努力したの。
だから、私は彼と闘いたいの。彼がどこにいるか分からないけれど、また会えるなら彼を倒したい」
「なるほど……そういう事だったのか……」
その“竹林不敗”とやらがリウリーの心残りだったとは……
そんな得体の知れない武術家、竹林を探せばすぐ出てきそうでヤバい。
もし見つかればリウリーはそいつと闘いに行って、二度と戻ってこないかもしれない。
最悪の場合、竹林不敗に惚れて……ん?竹林不敗は男か?うん、“彼”と言ったし男だな。
とにかく、こんな心残りは即刻潰さねば!!俺は念じた!
(来い!いい知恵!)
すると思いついた!そうだ!この手があるぞ!
俺は低い声を作ってこう言った。
「リウリーよ……ついに真実を打ち明ける時が来たな!俺がその“竹林不敗”だったんだ!」
「は?」
「お前の探し求めていた“竹林不敗”はこの俺だ!!」
リウリーは呆れた顔をしている。
「そんなわけないわ。私が会った時、彼は初老だったもの。貴方とは年齢も顔も違いすぎる」
「それは世を忍ぶ仮の姿だったとしたらどうする?そもそも、優秀な武術家がホイホイと素顔を晒していたら、
倒した悪い敵にいつ逆恨みで襲われるか分からないだろう?」
「そ、それは……」
「しかも王族の俺は、目立つわけにはいかない!
姿を変え“竹林不敗”として世界各国の困った民を人知れず助けていたのだ!」
嘘も堂々と宣言してしまえば信じ込ませるのは容易い。
ちなみに俺は“正義の味方ごっこ”の経験があるけれど、こっそり夜に城を出たのはいいが
何もできず迷子になって護衛に連れ戻されて、父上にしこたまお尻を叩かれた。あの時は死ぬほど痛かった。
そんな父上も今では初孫を待ちわびる好々爺だ。父上の為にも俺はこの作戦を、決めるッ!!
しかし、リウリーはまだ疑ってるな。
「でも、それなら、貴方一体いくつなの!?私が子供の頃に……え?え?」
「ふふっ……混乱してるな?別に、今見たままの歳だ。変装で初老になるくらい容易い」
「そんな……それじゃ……!」
リウリーが瞳を輝かせて頬を紅潮させる。
「“竹林不敗”!!」
あ!嬉しそうなリウリーが攻撃してきたら困る!今のうちに離れよう!
俺はリウリーとたっぷり距離を取って威厳ありげに叫んだ。
「来るがよい!!我が弟子になりそこないの姫!リウリーよ!
その実力どれほどのものか……しかと見届けてやる!!」
「はい!貴方と闘うために私は……!!」
リウリーが構えを取る。俺も今考えた構えを取る。
そして……
バキィィィィッ!!
「ぐふぅぅぅぅぅっ!!」
何だ今の蹴りは?早すぎて見えなかったし俺は吹っ飛ばされた。だって弱いんだもん。
けれど、蹴り一発で勝負はついて俺の作戦は成功だ。
傍で戸惑うリウリー……
「え?竹林不敗?」
「みっ……見事だリウリー……お前は俺を越えた。もうお前に教えることは何もない……。
これからは、己が女としても道を極めるんだ……我が、妻と……幸せな妻となれリウリー……」
「……」
やったぞ!これでリウリーの心残りは消えて、しかも尊敬する師匠の言葉で俺の良き妻となる!
どうだこの完璧な作戦!!俺死にそうだけど!
リウリーはますます戸惑っていた。
「こんなにあっさり勝ってしまうなんて、私は強くなり過ぎてしまったの……?」
「そうだな……俺としても、もう少し弱い女であって欲しかった……。
さぁ、良き妻となるんだろう?手始めに俺に今までの暴力を詫びるんだ」
「け、けれど何だか拍子抜けだわ……私、強い貴方が好きだったの。
夫にするなら強い男がいいし、私が倒してしまった貴方の妻となれと言われても……
貴方に従順になれる気はしない……」
「何だと!?」
何だこの展開は!俺の思ってたのと違う!早く何とかしなければ!
ああ!立ち上がろうとしたら関節が!全身が痛い!
「大丈夫?ワルイ様」
「リリアか?」
「ワルイ様はいくら武術の練習をしても弱いままでしたものね……」
俺を助け起こしてくれたリリアが小さな声で余計な事を言うのでこう言っておいた。
「うるさい黙れ。それよりリウリーを何とかしなくては!」
リウリーを見ると、悲しげな怪訝そうな何とも言えない表情で俺を見ている。
「…………」
(これはヤバい!ここでへたを打つとまた“変態”と呼ばれて暴力に耐える日々だ!)
俺は無我夢中で叫んだ。
「愚か者め!まだ分からぬのか!
これは強さを追い求めるあまり強さに溺れてしまったお前の目を覚まさせるための
竹林不敗としての俺からのメッセージだったっだのに!」
「え!?」
「もうよい堕落の姫君!言って分からぬなら体に教え込むまでだ!」
戸惑うリウリーに近づいた俺はリウリーの手を強引に取る。
正直、上手くいくか分からないけれど、今の俺には“竹林不敗”の名誉がある!気迫で押せばいける!
「この手だけは使いたくなかったが!」
「な、何!?何なの!?きゃっ……!?」
リウリーを引っ張ってきて、ベッドに腰掛けて膝の上に引き倒す。
さすがに混乱しているリウリーは抵抗しない。ホッ。
「あれは!!ワルイ王家に伝わる秘伝にして最強の奥義!スパンキング神拳の構え!!」
リリアが意味不明な事を叫んでいるけれど、いいエールだリリア!俺もその気になってきた。
リウリーの混乱が最高潮だろうけど。
「“スパンキング神拳”……?聞いた事が無いわ……!」
「(当たり前だそんなの無いし)ふふっ……我が王家に伝わる秘伝中の秘伝。異国のお前が知るはずがない。
だが、世界最高のこの奥義、その身に刻み付ける事光栄に思え!!」
俺は勢いよくリウリーの重いスカートを捲りあげて、下着を下ろしてしまう。
「きゃぁぁぁぁっ!!?ちょっと!!」
「いくぞ!スパンキング神拳!」
バシィッ!!
「ひやぁっ!?」
いい音が鳴って、リウリーが悲鳴を上げて飛び上がる。
(しかし何だろう……力が漲ってくる……!!)
俺は、未知の力が湧きあがっている感覚を覚えつつリウリーのお尻を叩いていく。
バシィッ!バシィッ!バシィッ!
「いっ、いやっ!!あぁぁっ!きゃぅっ!」
(そうやって弱弱しくしていれば可愛いじゃないかリウリー)
お尻を打たれて悲鳴を上げるリウリーが子供みたいで可愛い。
けれどそうだな、夫の威厳を確立するためにきちんと叱らないと。
「リウリー、お前は力を求め、それを過信するあまり力を振りかざして弱い物に向けた!そう例えば俺!」
「きゃっ!そ、それはアンタが変態だったからでしょ!!?」
「何っ!?また変態と言ったか!?」
ヤバい!竹林不敗の栄光さえ効力をなくしているのか!?また生意気なリウリーに逆戻りか!?
いかん!!なんとしても阻止だ阻止!!
阻止するために俺はますますリウリーのお尻を叩いて叱った。
ビシッ!バシィッ!バシィッ!
「あぁんっ!はぁん!」
「俺は変態じゃない!お前の着替え中に侵入したのも偶然だし、大体!俺達は夫婦だ!
肌の一つや二つ、見せ合って当然の仲だろう!?」
「段階ってものがあるでしょう!?バカ!アンタにはデリカシーが無いのよ!いやぁぁっ!」
「む?そういうものか?」
リリアの方に顔を向けると、うんうん頷いている。
なるほど。この点に関しては俺の配慮が足りなかったらしい。
「分かった。今後は気を付ける。意図せず不快な思いをさせて、済まなかったなリウリー」
「わ、分かればいいわ!ふっ、だから、離して!!」
リウリーが苦しそうに身を捻っている。よし、分かった離して……
っておい!俺が謝って終わりか!違うじゃないか!リウリーにだって落ち度はある!
俺は今一度リウリーのお尻に平手を振り下ろした。強く。
ビシィッ!
「おい!お前は俺に暴力を振るった事に関して謝罪はないのか!?」
「やぁぁっ!何で私が〜〜っ!!」
「すぐ暴力に訴えるのは悪い事だぞリウリー!お前にそんな想いがあるなら、話せばよかったじゃないか!」
バシィッ!バシィッ!バシッ!
「アンタなんかっ!信用できなかった!んぅぅぅっ!」
「なるほどな!ならば和解した今は素直に今までの事を謝るべきだ!」
「あぁああっ!嫌!嫌よ!絶対嫌ぁぁぁ!!」
「あ?」
何だ?リウリーめ、手足尻をバタつかせて嫌だ嫌だと駄々をこねて謝らないぞ?
さてはコイツ……ただ単に謝りたくないだけか!?なんて奴だ!
「けしからん!!」
バシッ!
「きゃぁぁぁぁっ!」
思い切り叩くとリウリーが悲鳴を上げる。お尻がそろそろ真っ赤だった。
「お前がそんなワガママを言うなんて思わなかったぞ!
悪い事をしたら謝るのなんて基本的な事じゃないか!そんな事も出来ないのか!
全く我が妻ながら情けない話だ!」
「う、うるさいわよ!やっ、痛い!痛いぃ〜〜っ!」
リウリーが本気で暴れている。けれど不思議と押さえつけていられる。
何だろう……この漲る力は。最大限に活用しよう!
ビシッ!バシィッ!バシッ!
赤くなっているお尻を叩いて、リウリーに謝罪させるべくさらに叱った。
「そんな生意気な態度を、この俺が許すと思うな!お前が素直に謝るまでずっとお尻を叩いてやる!」
「っあぁあ!うわぁぁぁっ!いやぁぁあっ!」
ワケも分からず叫んでいるだけっぽいが、俺の声は聞こえているはず。
泣いてもいないんだ。物を考えるくらいの理性はあるだろう。
謝らないのは反逆の意思ありとみなす!!
「リウリー、もう一度だけ言うぞ!許されたくば素直に謝る事だ!」
俺はそれだけ伝えて、リウリーのお尻を叩き続けた。
ビシッ!ビシッ!バシィッ!バシッ!
赤い上にさらに赤みがさしてくる。リウリーが暴れる。
「やめてぇ!離して!やめてってばぁぁぁっ!」
もう泣きそうなのにリウリーは一向に謝らない。強情娘。
仕方がない、俺の英知を授けてやろう。
俺は叩きながらリウリーに声をかける。
「聞け。いい事を教えてやる」
「んんっ!あぁはぁぁああああっ!いやぁぁぁっ!」
「俺の経験からして、泣き出すと案外呂律は回らない。つまり、謝ってしまうなら泣き出す前までが勝負だ。
お前にはもう時間が無い。謝るなら今だ!」
ふぅ。ここまで助言すればリウリーだってさすがに謝る……
「うるっさいわよ変態!!バカ離せぇぇぇぇっ!!」
「今、お前のすべての時間を奪う!!」
ビシッ!バシィッ!バシィィッ!
「うわぁああああああん!!」
生意気な態度にカッとなって、力の限り叩いたらリウリーが本当に泣き出してしまった。
少し冷静さを欠いてしまったかもしれない……が……
(リウリー、思ったより聞き分けが無いので一度痛い目にあわせておいた方が今後の為かもしれない……)
そう思ったので、気にせず真っ赤なお尻をお仕置きする事にしたのだ。
ビシッ!バシィッ!バシィッ!
「うわぁあああああん!痛い!痛いよぉぉぉぉ!!」
「お前が生意気ばっかり言うからだ!夫をなめるな!」
「うぇぇぇぇええっ!やぁぁああああっ!」
「いい機会だから、その生意気さを十分反省するがいい!あと暴力と!」
「うぁっあっ、わぁあああああん!!」
バシィッ!バシィッ!バシィッ!
「ひぇぇええええん!んぁああああああん!!」
真っ赤なお尻で大きな呼吸をしながら、大声で泣き散らしているリウリー。
さすがに何だか哀れになってきた……。
だから、叩くのをやめて声をかけた。
「おいこら、反省したのか?」
「うっ、うわぁあああああん!わぁぁあああん!」
聞いてみたけど泣くだけだ。うむ。困った。
「泣いてばかりじゃ分からない。もう謝らなくていいから、反省したのかそうでないのかだけ意思表示を頼む」
「うっ、ぇぇっ……きゅっ、ぅぅごっ……!!」
「ご……?」
「ごめん……なさい……!!」
「おお!!」
リウリーが謝ってくれたぞ!嬉しい!素直にできるじゃないかリウリー!
「うわぁああああああん!!」
「はっはっは!もう泣かなくていいぞリウリー!謝ったからお尻を叩くのは終わりだ!」
俺は何だか温かい気分になりながら、泣いている我が妻を抱きしめるのだった。

ちなみに、今日のご飯はリウリーと食べることができて故郷の話をたくさん聞かせてくれたぞ。
明日にはベッドを共にすることを願っている。


【その次の日だ】

リウリーの隣に座って、ぼんやりと各国の情報映像を見ていた。
すると、こんな映像が流れた。
『では、次のお知らせです。あの有名な武術家“竹林不敗”さんが実に10年ぶりに我々の前に姿を現しました。
その意図は、“引退宣言”だったようです。それでは現場の様子をどうぞ』
映像が切り替わり、初老の男性がにこやかに話す姿が。
『ワシも、もう若くないと悟りました。普通の爺に戻ろうと思います』
…………その映像を見ている間、俺は無言になるしかない。
しかし、リウリーは……
「な、何よこれ!!」
叫んで立ち上がって、また俺に叫ぶ。
「ちょっと!竹林不敗ってアンタの事じゃなかったの!?っていうか、どう見てもあっちが本物だわ!!」
焦るリウリーに対して、俺は冷静にこう告げた。
「だがしかし、ヤツは武術家を引退するらしいし、そんな奴と闘っても無意味だろう?
もうあんな男を追いかけるのはやめるんだ!お前には俺がいる!」
「なっ……アンタ……アンタってぇぇぇ……!!」
むむっ!その構えは!俺が蹴られる構え!!
「おい待てリウリー!昨日お尻を叩かれたのをもう忘れたかぐはぁぁぁぁっ!!」
気が付けば俺は吹っ飛ばされていた。
相変わらずの早い蹴りだ。
リウリーの怒鳴り声が響く。
「覚えてるわよ!覚えてるけど一発入れなきゃ気が済まないわ!何よ!何なのよ!
何が“スパンキング神拳”よ!おかしいと思ったわ!あんなのただのお尻ぺんぺんじゃない!
私のお父様だってやれるわよ!あぁ騙された!腹が立つ〜〜〜っ!!」
リウリーが怒り心頭の様子でこっちへ来る。俺はとっさに叫んだ。
「確かにお前に嘘をついたけど、お前への愛は本物だ!!」
「うるさい変態バカッ!!」
「ぎゃっ!!」
リウリーはわざわざ倒れている俺の上を歩いて部屋を出た。
そして最後に小さな声で言った。
「アンタも微妙だけど強い男だって、分かったから……もう諦めてアンタの妻やるわ。感謝しなさいよ、ワルイ」
「おお!」
部屋を出てしまったリウリー……名前で呼んでくれたぞ!嬉しい!
これは夫婦の契りも近いはずだ!


そんな事を思った、とある一日だった。





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【作品番号】TYS1

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